それでも愛してくれますか? (5/5)

最終話

 

「何? 話って」

 

 飲み屋の席での出来事から一時間後。
 飲み屋の近くの公園に、ようやく真澄はやってきた。ちりちり言う電灯の下、俺は真澄と正面から向かい合う。
「この前の、話の続きをしようと思って」
「この前?」
 ああ、と真澄は今思い出したとでも言うような冷めた表情を浮かべる。
 けれど、俺はもう、それを気にするつもりはない。
 俺は俺の言いたいことを言う。
「俺は、それでも俺は、お前と付き合いたいと思う」
 単刀直入に切り出した。
「正直なところ、お前からおとといの話を聞かされたときは、ショックで何も答えられなかった。あまりに滅茶苦茶で、何が何だかワケわからなかった。単なる冗談なのか、本当のことだったのかもわからなくて、ずっとそんなことばっか気にしてた。でもさっき、やっと結論が出たんだ」
 そこまでを一息で言い切って、俺はようやく真澄の反応をうかがう。
 真澄は、口を結んだまま無表情を必死で繕おうとしているように見えた。けれど、目はすっかり潤んでいて、もう一押しすればそれもすっかり崩れてしまいそうに見えた。
 でも、まだまだ。まだまだ言い足りていない。
「俺、お前がどんな奴でも、やっぱりお前が好きだと思う。だから――、だから、それでも俺は、お前を愛したい」
「カァーットォーーー!!」
「わあぁっ?!」
 不意に横から、意味不明の大声が上がり、思わずのけぞった。
 がさっ、という音と同時に、近くの茂みから三つの影が生えてくる。
 それが誰かと認める前に、笑いの大合唱が始まった。
「あははははははは、あ、あはははは」
「あは、あは、は、ひーっ、ひーっ」
 出てきた人影が電灯の下に照らされ、正体があらわになる。その三人の姿を見て、思わず声を上げる。
「とっ、みっ、……ゆっ、ええっ??」
 出てきたのは、今まで相談してきた、三人の男女。遠馬さんに瑞穂に、優果。三人は何がおかしいのか、これでもかと言うくらい思いっきり笑い転げている。
「いやー……、名演名演」
「まさかこんなの見れるなんてー」
「カメラ用意してくればよかったなぁ」
「ちょ……、これ、どういうことだよ?」
 あまりにワケがわからなくて、誰彼となく問いかける。
「あー、いやー、悪い悪い。実はな、今までのはちょっとしたドッキリなんだわ」
「はぁ!?」
 突然の衝撃発言に、思わず俺は目をむく。
「いやさ、俺たち、真澄から相談されてたんだよ。孝也と付き合ってだいぶ経つけど、肝心のお前がどう思ってるのか全然わからないって」
 遠馬さんの説明を聞いて、俺は真澄のほうを見やる。真澄はいつの間にか優果にしがみついてしまって、顔を上げさえしない。
「サークル内では誰もが知る優柔不断のお前だろ? だから今のままじゃ、適当適当にはぐらかしたままになるだろうと思って。だから、この藤谷遠馬さんがいっちょ脚本でも立てて、一芝居打ってやろうって、そういうことにしたわけ」
「ちなみに、腕の傷はワタクシ、白川瑞穂、演技指導が優果センパイでーす」
「じゃあ、もしかして、あの話は……」
「全部嘘」
 呆然と問う俺に、あっさりと優果が答えた。
「どうせなら、ものすごい波乱の人生で感覚麻痺させちゃったほうがだまされるからって遠馬先輩がね。どんどん話を大きくしちゃって、もう少しで真澄、犯罪の過去まで持つところだったんだから」
「ちなみにー、本当の真澄センパイはタバコも吸いませんよ? あれは遠馬センパイが自分のを無理やり渡したんです。リアリティの追求、とか言ってー」
「この子、あんたと話してたときも、いつ嘘がバレるんじゃないか、ってかなりハラハラしてたらしいよ」
「…………はぁーーー」
 俺は一気に脱力感を覚えて、その場に倒れこむ。なんだろう。この仕打ち。
「まぁまぁ。確かにほとんど嘘だったけど。きちんと本当のことだってあったんたから」
「え? は? 嘘?!」
 思わず、俺は体を起こす。その反応を見て、とても満足そうに、三人それぞれが真澄のほうに視線を送る。その視線に気づいたのか、真澄はようやく優果の胸から顔を上げた。目はすっかり真っ赤になっている。
「「「それは、真澄もお前のことを好きだと思ってるってことだよ」」」

 

END

1 Response to それでも愛してくれますか? (5/5)

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Naomi

9月 12th, 2012 at 23:19:39

嘘つきな神様へ、もし、わたしがみたあなたが本当のあなたなら、愛したいと思います。

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